今年、コロナ渦を経て4年ぶりに開催された熊野大花火大会。
熊野市の人にとって、熊野大花火大会が終わらなければ夏が終わらないという人も多いと思います。私だってそう。
それが、この4年間開催されなかった。
「夏がしまらない」
なんとも気の抜けた、区切りのつかないまま秋を迎えるような、もやもやとした気持ちをこの数年間味わって来ました。
2023年の夏。ようやく、夏の区切りがついた。そんな気持ちで堪能した熊野大花火の気持ちを記します。
4年ぶりの開催!2023年熊野大花火大会
台風の影響を受けまくった熊野の8月
本来ならば8月17日に開催の熊野大花火大会。2023年は台風の影響で延期になり、その後さらに波の影響で再延期。多くの人が願う中、思い通じて8月29日に無事開催となりました。
熊野大花火といえば、全国に知られた熊野市の一大行事であり、最も集客の多い1日でもあります。
自然現象のせいで仕方ないとはいえ、観光の面で言えばこの延期2回はキツかった。特にお盆の時期、一年で一番来て欲しくないタイミングの台風は歯噛みするほどキツかった。
私もグラフィックデザイナーの傍、自分でデザインしたヤタガラスの手ぬぐいなどをお土産物として販売していますが、本来想定していたより、売り上げが伸びず、悔しい思いもしました。
自然には勝てない。七里御浜、鬼ヶ城、熊野灘という大自然を舞台に繰り広げられる熊野大花火大会だけに、台風や高波には抗いようがないのです。
自然は観光や集客都合では動いてくれぬもの。そういうものなのだ、諦めの心が大事なのかと。
七里御浜の賑わいと熊野花火愛好会席
さてさて、延期にはなれど、熊野大花火の魅力が損なわれることはありません。
延期のせいもあり、平年より半数ほどのお客さんだったとのこと。なれど、これだけ浜が賑わっているのは4年ぶりです。堤防を潜り、七里御浜海岸に足を踏み入れた時の高揚感。これこれ!
ずらりと並ぶ屋台、焼肉や焼きイカ、ベビーカステラの匂いと共に飛び込んでくる熱気と夕暮れの水平線。まもなく陽は落ちて、花火が始まるのだというワクワク感が高まります。
親が熊野花火愛好会に入っていることもあり、今年はチケットをもらい熊野花火愛好会の会員専用席で観覧することにしました。メンバーは家族と嫁さんの実家のご両親。兵庫から駆けつけてくれました。
意外と知られていませんが、この熊野花火の愛好会席というのはかなりいい場所にエリアが確保されています。2023年でいうと、あらかじめ年会費を払うことでエリア入場のチケットが送られる仕組み(年度によって仕組みが変わる場合がありますので、熊野市観光協会のページをご確認ください)。
また、大花火大会の中で熊野花火愛好会提供の花火があり、毎年素晴らしいものが多いので、特に注目してもらいたいです。
海に近く、比較的鬼ヶ城寄りなので、毎年熊野大花火大会に来られる方には入会オススメです。
戻って来た熊野大花火大会
夏の日差しの温かみが強く残る砂利浜にシートを敷き、準備万端。普段七里御浜が近くにあっても、なかなかこうやって座ることはないので、これも花火大会ならではの感覚。
陽は山に沈み、そして熊野大花火大会は始まりました。
スターマイン、追善供養のナイアガラ、会場自爆と「これぞ!」のプログラムが進行していきます。
コロナ渦の間も、熊野では試し打ちや冬の特別花火などはあったのですが、やはり夏の大花火にはかないません。
スピーカーから流れくる花火の紹介、波打ち際に並べられた初盆供養、暗い海の向こうに浮かぶ漁船、海から吹いてくる風、ワイワイガヤガヤといった喧騒と、花火の後にあがる歓声。
いいものだなと。つくづくいいものだなと。待ち望んでいた熊野大花火が戻って来た実感を楽しみました。
待ちに待った熊野大仕掛け
三尺玉会場自爆も終わり、いよいよお待ちかねの鬼ヶ城大仕掛け(YouTubeにアップしている方がいたので、リンクさせてもらいます)。
その昔、木本町で酒屋をやっていた私のじいちゃんばあちゃんは、鬼ヶ城大仕掛けの時間に浜に来て、フィナーレだけを堪能したものでした。案外木本町の人にはそういう人もいるのではないでしょうか。
毎年、列車や交通規制の関係もあってか鬼ヶ城大仕掛けの前に帰る人を見て「大仕掛け見んと帰るなんて!」と文句をいうおっちゃんもチラホラいました。それだけ各人鬼ヶ城大仕掛けへの思い入れは強いのです。
近年、定番となった彩色千輪(カメラマンのシャッターチャンス)で大仕掛けの幕が開けます。
鬼ヶ城から放たれ、熊野の海を七色に染める彩色千輪。美しさの花火に続くのはど迫力の花火。これでもかというほど、大玉の花火が連続で打ち上げられます。
そして鬼ヶ城大仕掛けの目玉、鬼ヶ城で花火を自爆させる…あの花火の名前はなんというのでしょうか。鬼ヶ城の岩場で自爆させることにより、円形の4分の1の形で弾け飛ぶ唯一無二の花火。鬼ヶ城と周囲の山に反響するその轟音は「ズシン」と胸に響き、観客の体を震えさせます(上記YouTubeの5分15秒くらいからはじまります)。かつて、その轟音で近隣の民家のガラスが割れたという伝説もあります。
鬼ヶ城大仕掛けには「巌頭のとどろき」という副題がつくことが多いので、私はあの花火の名前がそれではないかなと思っていますが。
ともかく、この轟音を聞いて初めて夏が終わったという気持ちが訪れます。花火の爆風が暑気を追い払い、秋の風を呼んでくれる、そのような心持ち。
花火師さんありがとう
祭りの後はいつでも寂しいもの。大仕掛けの最後の花火が空に消えると、なんとも言えない気持ちが訪れます。
しかしその後には、これまた熊野大花火大会の恒例、観客が携帯など光るものを振りながら花火師さんに感謝を伝える時間が訪れます。万人の感謝に対し、花火師さんからどういたしましての最後の一発が打ち上げられて、熊野大花火大会は終了します。
数キロに及ぶ、七里御浜の観客が一斉に手を振る光景。写真はちょいとブレていますが、携帯の明かりが揺らめいて、そこに詰まった感謝の気持ちなど思うと、グッとくるものがあります。
鬼ヶ城の山並みを見つめると、燃えていました山火事が。これもお約束。消防士さん、どうぞよろしくお願いします。そして今年もありがとう。
2023年の熊野大花火大会。今までになかった、4年ぶりという空白ののちの花火大会。
当たり前におこなわれていた行事が行えなくなり、それが再び行えるようになったことの喜び。今までの花火大会では感じたことのない、気持ちのこもった熊野大花火大会でした。