こんにちは。三重県熊野市のデザイン事務所ソルトグラフィックの塩崎です。
今日は私がロゴデザインを担当させて頂いた「トンガ坂文庫」さんをご紹介させていただきます。
トンガ坂文庫さんは、三重県の尾鷲市九鬼町という漁村にある本屋さん。古民家を改装した非常にセンスのある本屋さんです。
お店の紹介と共に、トンガ坂文庫さんのロゴデザインについて書きたいと思います。
トンガ坂文庫さんを訪ねて
三重県尾鷲市九鬼町にある本屋「トンガ坂文庫」
三重県の尾鷲市に九鬼町という漁村があります。漁業で栄えた町で、今でもブリ漁などが盛ん。
山々に守られた湾の奥にあり、外洋の影響を受けにくいことから、古くから港として多くの船を受け入れてきました(大阪から江戸へ向かう廻船なども立ち寄ったそうです)。戦国時代に活躍した九鬼水軍発祥の地とされており、歴史ファンの胸を熱くさせる土地でもあります。
九鬼町は湾を囲むように山の傾斜があり、そこにそって家々が建ち並んでいます。細い路地が縦横無尽に張り巡らされており、どの道をどう行けば目的地にたどり着くのか、ちょっとした迷宮感をも楽しめます(私個人の感想ですが)。
そんな細い路地を通って、上へ上へと向かっていくと、そこにトンガ坂文庫さんがあります。初めて訪れた人は「えっ!こんなところに本屋さんが!?」と驚かれること間違いなしの場所。本当に、不意に現れる、そんな感じ。
初めてトンガ坂文庫へ向かわれる方は、路地を迷われて通り過ぎてしまうこともあるみたい。路地の入り口辺りから、ポイントポイントで案内板が置かれているので見過ごさないようにしましょう(グーグルマップを見ても、トンガ坂文庫までの細い路地は表示されていないです)。
ソルトグラフィックでトンガ坂文庫さんまでのルート動画を制作させていただきました。参考にどうぞ。
選書が素晴らしいトンガ坂文庫
尾鷲市九鬼町の細い路地を登って行った先にある本屋「トンガ坂文庫」さん。古民家を改装した本屋さんで、一歩中へ入るとおしゃれで居心地の良い空間が広がっています。
店主の本澤さん(写真の女性)は東京から数年前に尾鷲へ移住された方(「本屋」の「本澤」さん!)。同じく東京から移住された豊田さんと二人でこのトンガ坂文庫を運営されています。
このトンガ坂文庫さんは、なんといっても選書のセンスが素晴らしい!絵本や小説はもちろんのこと思想書、人文系、ガチの哲学書(⁉︎)まで厳選された書籍が出迎えてくれます。
本が好き、本屋好きという方ならば共感してもらえると思いますが、自分にハマるハマらないというのがあるはず。どんなに素敵な本屋さんでも、その選書が自分にハマらないと足が遠のいてしまう。その点、トンガ坂文庫さんの選書は私的にどハマり。大手の書店さんでは出せない、店主のセンスが明確に打ち出されている点などもお気に入りのポイントです。
特に絵本などは大手の書店でもなかなか手に入らないような、コアなものも。
インドにタラブックスという、一冊一冊シルクスクリーンでハンドメイドの絵本をつくっている出版社さんがあります。なかなか一般の本屋さんでは手に入らない、タラブックスの絵本も何種類か扱っており、私もトンガ坂文庫さんで購入しました(「夜の木」という絵本で、シルクスクリーンならではの素晴らしい色彩です)。他にもちょっと他では見たことのない面白い絵本が豊富で、お子様連れでも楽しめます。
また、人文系や哲学系の本は店員のお二人がその方面に明るいことから(豊田さんは大学で哲学を専攻されていました)、これまた町の本屋さんではなかなかお目にかかれない品揃え。豊田さんがセレクトするガチの人文哲学系の書籍は、トンガ坂文庫を訪れるお客様に哲学の扉を開いてくれます。
最近では九鬼つながりということもあり「いきの構造」で有名な哲学者の九鬼周造の本に力を入れているそうです。九鬼周造はその著書「九鬼周造随筆集」で実際に自分のルーツを訪ねるため九鬼町に訪れたともあります(そのことを知り、店主の本澤さんはかなりテンションが上がったそうな)。その熱の入れようは半端ではなく、最近九鬼周造グッズという非常にニッチな商品を開発。しかし、九鬼周造やいきの構造に興味がある人には非常にグッとくる、センスの高いものに仕上がっています。
新書から古本まで品揃えがあり、探せば探すほど面白い本に出会えるのもトンガ坂文庫の魅力です。
(余談ですがお二人とも、私も参加している「本夜茶会」というブックトークのメンバーで、毎月一度夜遅くまで本についてわいわい楽しんでおります。)
猫のいる本屋さん
このトンガ坂文庫さんのもう一つの特徴が、看板猫がいるということ。
まだちゃんとないちゃんという二匹の猫がいて、いつもお客さんに可愛がられています(夏目漱石「吾輩は猫である」の名前はまだないからきたそう。この点も本屋さんらしい)。
大きくてぶちの方がまだちゃん。小さくて灰色のほうがないちゃん。時々まだちゃんとないちゃんの追っかけっこがくりひろげられるなど、見ていてあきません。猫と本屋というのがなんともマッチしており、和みます。
ちなみにまだちゃんは小さいころ、九鬼町で「それでも恋する」というドラマの撮影があり、人気俳優の志尊淳さんに抱っこされてテレビ出演を果たしたという立派な経歴があるお猫様。
トンガ坂文庫さんのカウンター前に、あみあみの椅子があるのですが、そこでまだちゃんが休んでいることがあります。その椅子の色とまだちゃんが同化していて、うっかりお尻でふんずけそうになることもあるので注意!
トンガ坂の由来とトンガ坂文庫のロゴについて
そんなトンガ坂文庫のロゴデザインは、ソルトグラフィックで担当させていただきました。
お二人がロゴに希望されたモチーフに「蜘蛛の糸」と「石臼」があります。それにはトンガ坂文庫の前にある「トンガ坂」という不思議な名前の坂の由来を説明せねばなりません。
トンガとは九鬼町の方言で「大ボラ吹き」のような意味をさすのだそう。
その昔、九鬼でも有名なトンガ(大ボラ吹き)なおやじがいました。
ある嵐の翌日、そのオヤジは「昨日の嵐でうちの石臼が飛ばされていったわ」と言いました。
すると輪をかけてトンガなおやじが「その石臼、うちの蜘蛛の巣にひっかかっとったわ!」と返したそうです。
そのオヤジたちが坂の近くに住んでいたことから、トンガ坂という名称がついたのだとか。
ロゴをデザインするにあたって注意したのは「蜘蛛の糸」がゴスっぽくならないようにすること。蜘蛛の糸というモチーフは、使いようによって、すぐにゴシック感が出てきてしまいます。そういった雰囲気をださずに蜘蛛の糸を組み込むことがこのロゴデザインの課題でした。
蜘蛛の糸と本で菱形を描き、その中に石臼のうち面を配置することで、お二人の希望する要素と本屋としての要素をロゴに表現できたと思います。蜘蛛の巣の形が投網にも見えることから、トンガ坂文庫さんの持つ漁村の本屋さんという要素も加味できました。
また、チャームポイントとして、上部にあるTONGAZAKAのAの上にカタカナの「ト」を配置。「ト」をつける前はシンメトリーでおとなしい印象だったのが、これをつけることにより一気に引っかかりのあるロゴに。
この「ト」は、なんだかアンテナっぽくて情報や文化を発信していそうな雰囲気も持たすことができました。本屋さんは地域の文化促進、発信装置の一面もあると考えているので、その点でもこのアンテナっぽさはロゴに効いているとお思います。
最近では、トンガ坂文庫のお二人は友人たちと「漂着する!まだないとラジオ」というウェブラジオも始めれられました。ロゴにこめた情報発信のイメージが形になってきたようで、デザインした側としても嬉しい限りです(ちなみにですが、私はまだないとラジオの第7回放送にゲスト出演させてもらっています)。
本屋さんというカテゴリーを超え、様々なワクワクごとにチャレンジされているトンガ坂文庫さん。尾鷲市を訪れた際は是非お立ち寄りください。そしてソルトグラフィックデザインのロゴへの注目もどうぞ。
※ロゴやパンフレットなど各種デザインがご入用の時にはソルトグラフィックにご相談ください。
トンガ坂文庫さんのホームページはこちら
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